日 時 | 2016年9月21日(水) 18-19時 |
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場 所 | 京都大学 吉田泉殿 |
スピーカー | 近藤康久さん(総合地球環境学研究所) |
地球環境問題は人と自然の相互作用
つまり、課題解決型研究(たとえば医療問題、環境問題など)は「臨床系」といえる。人と接する分野が主なので、社会との親和性が高い。
社会協働研究の類型
- Participatory research:研究者が主導
ex.) (従来的な)市民科学的なもの、質問紙調査、アイディアソンなど - Action research:主導権は課題当事者(市民)
ex.) 自治体からの受託研究など - Transdisciplinary research(狭義)
1と2の中間的なもの
Transdisciplinary researchの具体例:遺跡発掘研究
- 設計コンセプト
研究以外でも使い勝手が良いように設計する必要がある。
要点はsimple, sustainable, security。
アクター(ステークホルダー)ごとに目的を切り分ける。
世代が変わっても使える仕組みにする。 - 史跡整備計画への反映
アクター
- 研究者
- 意思決定者
- 生活者
- プロボノ(専門技能をもった人。地縁がないが、社会貢献への意思は高い人。)
○ 具体例) MIX!琵琶湖:地球研のアイディアソンで着想(実際に取り組むための準備を開始したところ)
オープンサイエンスの実態
- 同床異夢、「オープン」に夢を託し、現状を変革(北本2015、2016)
- 短期的効果=プロボノにより実現
オープンデータ=科学知の解放
ex) Scholz 2012, 2014
問題点
- 意思決定者と研究者の間にGAPがある
- 意思決定者が社会課題を設定し、それに合わせた研究をするpull型か、研究者が学術データに基づき社会課題を提言するpush型かになる
問題点:形式知は共有できても暗黙知は共有できない、形式知だけをオープンにしてもオープンサイエンスはうまく動かないだろう
- 暗黙知→形式知=論文化、形式知→暗黙知=アウトリーチ
- 暗黙知+形式知=知識システム ex.) 野中郁次郎、紺野登2003
- 形式知だけオープンにしてもだめ
- でも暗黙知をオープンにするのはしんどい。AIも無理。誰がやるのか?
→ evangelist的な人の登場を待つ?プロボノでまかなえるようになる?
ここで大切になるのが対話
- 対等な立場で
- 共同事実確認
- 相互信用 ex) アンカファレンスでの議論
OSの何が障壁か?
- データのupdate、管理など
社会課題解決型研究をオープンサイエンスとして捉えたときにプレイヤーは誰になるのか?
- 利用者、研究者、生活者、プロボノ
- データライブラリアンも?
- evangelistはイノベーションを生むような役割にもなる
- evangelistとしてはさかなくんが好例だが、さかなくんはアマチュアからプロになった特殊例であり、参考にはならないかもしれない
Evangelist
- ただサイエンスができるだけではだめ。コミュ力が必要。キャリアパスも考える必要がある。
- 誰ができそうか?電通のような企業では視野が広く社会貢献意識も高い人が多い印象があった。ただしブラックな人でないこと、特定の企業の利益につながらないことが必要
OSでアマチュアとプロの境目が消える可能性もあるかも?
Q&A
◯ MIX!琵琶湖に関して
水草の利活用が進むと、今度は水草が増えてくれる方がメリットが出て来るのではないか?
当初の目的と活動全体がどう絡むのか疑問。
- アクターごとに色々な思惑が入ってくることになるだろう。
- 全体としてはPure scienceではないかもしれない。
◯ OPENの意味
OPENには2つの意味(外部にデータをオープンにする、外部ワーカーをオープンにひきこむ)がある。
外部ワーカーをひきこむにはデータをインセンティブとして使うことも必要なのでは?
◯ プロボノのインセンティブは何か?
- 社会問題解決への貢献(貢献意欲を満たす)
(研究者がプロボノになることもありえる)
◯ evangelistはどういう人がなるのか?
- インセンティブは社会問題の課題解決が消化されること
- チームで役割を担えないか?
- 地域でまとめ役を担っている人、研究者のOBなど?
◯ 市民科学の可能性
- 既存の学界を越える
- 「研究」ではないかもしれない