日 時 | 2016年11月28日(月) 18-19時 |
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場 所 | 京都大学 吉田泉殿 |
スピーカー | 阿部 康人 さん(同志社大学社会学部) |
メモ
〇 科学の修辞学
- 主張と科学的根拠は「論拠」によって結びつく。
- しかし、論拠は人や場所、時代によってさまざま。
〇 説得の研究について
- リスクコミュニケーションの分野などでは説得行為の研究が盛ん。
- 説得研究はアリストテレスの時代にまでその起源を遡ることができる。
- 発信者のキャラクター、感情、論理性など、様々なものに影響されて人は説得される。
〇 FactとDataは異なるもの
- コミュニケーション学の分野では、データは「科学的事実を主張するための前提」として「つくられるもの」と考えることが可能。
- したがって、データを生み出す行為そのものを(誰かを説得するための)コミュニケーション行為と捉えることができる
〇「Safecast」について
- 福島第一原子力発電所事故をきっかけに始まった市民科学の活動。
- ガイガーカウンターで環境放射線量を測定することが目的。当初からゴールは決めずに様々な人たちを巻き込みながら活動の目的がつくられてきた。
- データは基本的には公開。複数のモデレータが数値を確認している。
- 測定方法については、地上1メートルを測定するといった決まりを除けばそれほど厳密性を求めていない。
- ある程度おおざっぱな数値であっても、沢山データを集めることに意味がある。
- ガイガーカウンターに表示される個々のデータの数値の正確性や測定器の校正などについては課題が存在すると指摘する専門家もいる
〇「こどもみらい測定所」について
- 市民(顧客)の要請に応じて環境放射線量を測定する。
- データの一部は公開しているが、基本的には非公開。
- 正確なデータを重視する。測定や公開のスタンスについて、Safecastとは異なる点がある。
〇「オープンサイエンス」で考えるべきこと
- インターネットはオープンな領域を広げた。しかし、インターネットに接続できる層と接続できない層がある。インターネットに接続できても、スキルには個人差がある。何が、誰に、何の目的で、どの程度オープンになっているのかを考える必要がある。
- 目的に応じて測定されるデータの性質は変化する。どのような手法で測定されたデータがサイエンスなのか。
- 歴史的背景を考える上では人文学の視点からの考察が役立つ。
* 質疑応答
- オープンサイエンスの有効性は、扱うジャンル、タイミングによって異なるのでは?
- データの独立性や精度をどう担保するかは大きな課題。
- 「プロデューサー」の力量が問われる。プロデューサーに悪意があったらどうなる?
- データの評価が出来る人(専門家)がどこかにいることが大切?
- 日本では類似の活動があまり盛んではなさそうにみえる。文化的な何らかの要因があるかもしれない。
(作成:一方井 祐子)